中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)の現場レポート

建築士による中古住宅の住宅診断(ホームインスペクション)の現場レポートです。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)の現場レポート :大阪府門真市 Part3-3

さて、洗面室へ行きましょう。壁の上方に取り付けられたブレーカーを見上げた田中さん。

「オール電化にしては回路数が少ないですね」
えっ、それは困りませんか?
「今、60アンペアですよ。外にあるメーターは120アンペア。普通は外が30、中が60か75アンペアは欲しいです。」

全く素人の私は、具体的な数字を聞いても分かりませんが、少ないよりは多い方がいいような気がしますよね。容量不足になってはいけませんし、ブレーカーの増設が必要のようです。

しかしこの洗面室、やけに狭い気がします。どこに洗濯機を置けばいいんだろう・・・
「洗濯機のパンをここに置くとして・・・」
お客様が、ブレーカーの下のスペースを見ながら言います。
「全自動だと、かなり大きいから通りづらいかなあ」
一昔前の洗濯機はもう少し厚みが薄かったですものね。今は殆どが全自動。新築であれば、それを置くことを想定して、洗面所を作っているはず。

ここでも、昔の住宅と今の住宅との違いが浮き彫りになりました。どうやら、洗濯機をリビングキッチンに置くかベランダに置くか、検討する形になりそうです。
「洗濯機用の水栓は外されていますから、設置が必要です。」
この場所に置くとしても、合わせて洗濯機用の排水を設置する必要があるのですね。

残念ながら、断熱材の有無を確認するための点検口は、お風呂場にはありませんでした。というわけで今回、「床下・屋根裏の詳細調査」は実行できません。

田中さんが言います。「点検のために点検口や床下収納庫があるのが普通だし、いざという時に便利です。この家は、最初は点検口か床下収納庫があったのを、改装の時に塞いでしまった可能性がありますね。」

こんな場合、購入後に自ら点検口を設けて、早期に点検されることをお奨めします。長く住むことを考えれば、維持・メンテンナンスが非常に大事ですから。点検口は業者に頼めば、1時間ほどで簡単に開けることができるそうです。

全ての項目を点検し終わった田中さん。皆さんにはリビングキッチンに集まっていただき、本日のまとめに入ります。



最初に確認していた越境の件については、地積測量図がしっかり入っているので、境界について揉めることはないだろうとのこと。但し、越境そのものが良くないことは知っておく必要がありますね。

3階の洋室2部屋のフローリングは、部分的に片一方に傾いていた。しかしリビングキッチンのフローリングは、部屋の真ん中で盛り上がっている。柱に傾きが見られない。以上のことから、これは建物全体が傾いているのではないと判断できるということ。このように、一部のみ見ての判断ではなく、全体の様子を総合し、読み取れることをお伝えできるのです。

また、建築確認申請の確認済証があるかどうかも、確認しておく必要があるということ。今回は競売物件であるため、今の売主(所有者)が持っていない可能性も。しかし仮に将来、建物を売却する場合には、検査済証が有る方が有利に働きます。再発行はしてくれないが、検査済証を取った、という書面は頂けるということ。なんだかややこしく聞こえますが、必要なものなんですね。

雨で畳が濡れていたため、雨漏りの可能性があるということでしたが、そちらは問題なさそうでした。これについてもやはり、1室だけではなく他の和室などの確認も含めて、総合して読み取ることが大事だということになります。

他に、サッシや扉のガタツキ、収納梯子の動作や表のフェンスなど、多少の直すべき箇所がありました。これらは、売主側へ補修を求めることが可能です。よくあるのは、お客様が売主様や仲介業者の方へ遠慮されるというケース。言いづらいこともあるでしょう。

しかし大きな買い物をされるのはお客様です。問題点を明らかにして取引した方が、後々のトラブルを抑制することもできますので、売主様としても本来はメリットのあるものですね。是非ご契約前に調査し、建物の劣化状態などを把握、購入判断に活かして頂きたいものです。今回のようにリフォーム済みの中古住宅なら、リフォームの施工精度も可能な範囲で確認できます。

なお、今回のように売主が不動産屋である場合、2年の瑕疵担保期間があり、それまでに何か不備があれば不動産会社に補修を求めるなどの対応も可能ということ。これは安心できる材料の一つと言えるのではないでしょうか。

最後に全ての窓や扉を閉め、電気を消し、皆でゾロゾロと外へ出てきました。なんて長い調査時間だったでしょうか。実は私恥ずかしながら、途中でお腹が空いてグウグウ鳴ってしまいました。でも皆さん、とても熱心に田中さんに質問していましたよ。だから平均より長い調査時間になったのでしょうね。それは、住宅を買うのに必要なことだと思います。

ご挨拶をして玄関を出る時、お客様の一人が「不明な点がありましたら、お電話しても良いですか」と田中さんに聞いていました。「もちろん。差し上げた名刺の携帯番号におかけ下さい」とのことです。

本日は、最後まで真剣に質問をされていたお客様、同行させて頂いて私も大変勉強になりました。ありがとうございました。田中さんも、大変お疲れ様でした。今から車で神戸まで帰られる予定です。途中で眠くならないように気をつけて下さいね。

そして最後まで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。次の現場レポートは本日の経験を活かし、もっといいものを仕上げられるように、精進あるのみです。

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