中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)の現場レポート

建築士による中古住宅の住宅診断(ホームインスペクション)の現場レポートです。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)の現場レポート :大阪府門真市 Part3-2

同じ3階にある和室へ移動。窓を開け、「戸車が遅い」と呟く田中さん。サッシの動作があまりスムーズではないようです。

ピンを使って窓に近い方の畳を持ち上げます。畳の敷いてあった床をシゲシゲと見つめていた田中さんが、口を開きました。

「心配し過ぎることはありませんが、雨で畳の下が濡れましたね。雨漏りした可能性があります」 「いつでしょうか?」 「工事中にした可能性がありますが、そうでない可能性もあります」

先ほどの部屋の傾きの時も同じですが、一部だけを見て判断するわけではなく、他の部屋の畳も見て確認するのです。雨漏りとは違う可能性も捨てきれないので、これだけで安易な判断はできないということですね。



いよいよ小屋裏へ上がります。3階廊下の天井を、備え付けの棒のようなもので引き出し、折り畳み式の梯子を用心しながら登るのです。ロフトや収納として利用できるこの空間は、まるで隠れ家みたいで楽しそう。私に子供がいれば、子供部屋などに使いたいな~と思います。

しかし田中さん曰く「この部屋は物置としてしか使えない」のだそうです。換気扇は備えつけてあるため、それを回して空気の入れ替えを行うことは可能でした。しかし断熱性が重要で、それが十分でないと空間の室温は夏場には上昇、冷房効率は低下します。

そんな場所を、それと知らずに部屋として使用していたら・・・夏場に子供を車の中へ置き去りにする状態ですよね。お、恐ろしい・・・確かに今立っているだけで、ムーっとした空気です。こんな所に長時間いるだなんて、あり得ません!

この小屋裏部屋の壁に進入口があれば、そこから覗いて断熱材の有無を確認することができるわけです。また、今回のように「床下・屋根裏の詳細調査」をご依頼頂いている場合は、田中さんがその進入口から入り、その中をくまなく見て、どの辺りまで断熱材が入り、どのような設置状況であるのかを、広範囲で確認することが可能です。

「物置として使用できますが、気温が高いと置いておけないものはダメですよ。でも、この部屋があるため、階下の部屋がその分涼しいのです」と、田中さんは言います。断熱材が正しく設置されているかいないかによって、部屋の扱い方に違いが生じるというわけですね。

それにしてもここは暑い。少しでも涼しい階下へ降りたいものです。一足先に小屋裏から梯子で降りようとした直前、お客様が尋ねられました。

「この、ヤニみたいな樹脂は何でしょう」

確かに、梁の部分が蜜のように光っています。

「梁に松の木を使っているから、ヤニが出るのです。松の木は強いのはいいんですが、このようにヤニが出ますね。しかし、垂れるというほどのことはありません」

ほんの些細なことですが、その場で聞いてすぐに答えていただけるのが、現場調査の良いところですね。これから調査を実施されるお客様も遠慮せず、疑問に思ったことは何でも聞いてしまいましょう。

再び2階のリビングキッチンへ。ここは事務所を兼ねていたということで、キッチンは殆ど使用されていなかったとのこと。綺麗に磨かれ、生活感がない印象でした。更にその奥にある和室へ足を踏み入れると、なぜかヒンヤリとした空気に包まれました。日当たりの良くない方の部屋で、ずっと締め切っていたせいなのか、これは流石の田中さんでも、分からないということです。

3階にあった和室の時と同じように、畳を持ち上げます。そこで田中さんの一口アドバイス。

「防虫シートは畳の下に敷いて使ってはダメですよ。シックハウスの原因になるんです。防湿シートは使用してもいいけど、あまり効果はないでしょうね」

カビや結露対策には、換気扇を回しておくこと。外出する時など、窓に付いている換気ブレス(給気口)を開けておくというのも、換気対策には効果的なのだそう。私も家へ帰ったら、早速換気扇を回すように心掛けるつもりです。

ちなみに最近の畳は表はイグサですが、芯は「スタイロ」といって、発泡スチロールのようなものになっているということ。昔の畳だったなら、こうして持ち上げるのにもひと苦労だったでしょうね。

「それと、今はヒサシが付いていない窓が多いです。無くても雨漏れがしないようになっているし、工事をするにも面倒なんです。サッシや防水テープで防ぐことができる。でも、ちょっと雨なんかが降っていて窓を開けたい時に、無いのとあるのとでは違います」

昔とは言ってもそんなに大昔ではないはずなのに、以前と今とでは少しずつ違ってきているということ。住宅の歴史についても、勉強できました。



エアコンのスリーブをLEDライトで覗いていた田中さん。

「・・・断熱材が見えない」

そういえば2階・3階は木造ですが、ここ1階だけは鉄筋コンクリートだということでした。

「鉄筋は熱を吸うから、しっかり断熱材を設置する必要があるんですよ。入っていないと、冬場に結露がひどくなる可能性があります」

鉄筋は熱容量が大きくしっかり吸収するが、放出するのも量が多いということです。しっかり断熱する必要があるんですねえ。

「ここで無理でも、お風呂場からなら覗けるかも知れません」

そうですね、まだお風呂場が残っていましたから、断熱材についてはそちらで確認できるのを期待することにしましょう。

お風呂場へ移動する前に、トイレの点検です。大勢で入るわけにもいかないので、田中さんが先に一人で中へ。閉めたり開けたり、水を流し、排水音の確認などをしている音が聞こえます。

「例えばこのドアを外開きに変えることはできませんか」とお客様。
「う~ん、できると思いますけど、簡単ではないですよ。蝶番の位置が変わります。レバーハンドルの先の引っかかりが、表と裏とでは違いますし」

お客様は、トイレの中へ入る時に内側へ開くドアが気になるご様子です。田中さん曰く「本来は内開きなんですよ、原則はね」。内か外かだなんて、考えてみたことはありませんでした。しかしそうですよね。狭い廊下に外開きのドアは、ぶち当たって邪魔になります。

「最近はバリアフリーの関係で、外開きになってくる傾向にありますけどもね」
こんなちょっとしたことでも、以前と今とでは違ってくるものなんですね。
「トイレの換気扇を、できるだけ使用して下さい。結露対策のためにもね。」

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